従来の教育観を揺さぶる視察。「戻る」ではない居場所の価値:白石きぼう学園視察報告


こんにちは。金沢市議会議員の宇夛裕基です。

先日、文教消防委員会として、宮城県白石市にある「白石きぼう学園」(学びの多様化学校)へ視察に行ってまいりました。

不登校対策やインクルーシブ教育のあり方が問われる中、従来の教育観を大きく見つめ直す、大変有意義な時間となりました。

この視察で学んだ「子どもにとっての居場所」に関する深い哲学を、金沢市の教育行政に活かしてまいります。


「戻る」ではない。どちらも居場所であるという哲学

今回の視察で最も強く印象に残り、従来の教育観が揺さぶられたのは、白石市教育長の熱意あるお言葉でした。教育長自ら長時間にわたり、学園設立の背景と教育哲学についてご説明くださり、その熱意と信念の強さに圧倒されました。

教育長の核心的なメッセージは、「通常の学校へ『戻る』という考え方はしていない」という点です。

多くの場合、「学びの多様化学校」は、元の学校生活に戻るための「リハビリ施設」のように捉えられがちです。しかし、きぼう学園ではそうではありません。子どもにとって安心して過ごせる場所が、従来の学校でも、きぼう学園でも、どちらも対等な「居場所」であると捉えていました。

「元の場所に戻らなければならない」というプレッシャーから解放し、子ども自身が最も伸び伸びと成長できる場所を選択できる環境こそが、真の多様性を実現すると強く感じました。


「測れない価値観」を尊重する現場

きぼう学園では、「テストで良い点をとる」「偏差値の高い高校を目指す」といった、既存の定規では測れない価値観が尊重されていました。

ここで大切にされていたのは、子どもが精神的に安定し、自己肯定感を育み、次のステップへ自ら進む力を養うことです。

この教育長の強い思いは、教職員の先生方にも深く理解され、実践されている様子が感じられました。先生方は、一人ひとりの子どもの状態に合わせた柔軟な対応をされており、教職員が一体となって理念を体現している姿に感銘を受けました。


 現場の理解を深めた実態把握

視察では、単なる理念だけでなく、実際の学校生活の様子も拝見しました。

  • 送迎の工夫給食の提供方法

  • 学校生活の過ごし方実際の授業現場

これらを自分の目で見ることで、送迎時の負担軽減や、給食を通じた栄養・コミュニケーションの確保など、机上の議論だけでは見えなかった具体的な課題と、それに対する現場の真摯な工夫を深く理解することができました。

また、保護者組織をあえて作っていない中で、子どもが安定することで、保護者も前向きになり、自発的に「保護者の会」などが生まれてきているというお話は、非常に示唆に富んでいました。安心感こそが、前向きなコミュニティを育む土壌となることを示しています。

まとめ:金沢の教育に活かすために

今回の白石きぼう学園の視察は、「多様な学びの価値観」と「子ども中心の居場所づくり」の重要性を改めて認識する貴重な機会となりました。

現在、金沢市でも学びの多様化学校の設置に向けた検討委員会が開催されています。

今回の視察で得た、「戻る」ではない、安心して過ごせる居場所を保障するという哲学と、現場の具体的な知見を、金沢市での設置検討や今後の教育環境整備に必ず活かしてまいります。

引き続き、子どもたちの未来のために尽力してまいりますので、皆様のご意見もお待ちしております。