【視察報告】「カタイ絆」でまちを蘇らせる。糸魚川市駅北大火からの復興に学ぶ教訓


こんにちは。金沢市議会議員の宇夛裕基です。

先日、金沢市議会文教消防常任委員会の行政視察として、2016年(平成28年)に発生した糸魚川市駅北大火からの復興状況を学びに、新潟県糸魚川市を訪問しました。

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金沢市もまた、歴史的な街並みや木造の建築物が密集する狭小な路地が多く存在しています。糸魚川市と類似した、いつ何時、大規模な火災(大火)が発生してもおかしくないという切迫したリスクを抱えているのが現状です。

私たちは、この糸魚川市駅北大火の悲劇を他山の石とせず、今後の金沢市の防火対策に活かすために、今回の視察に臨みました。糸魚川市がどのように災害を乗り越え、より災害に強いまちづくりを実現したのか、その教訓を報告いたします。


1. 糸魚川大火の概要と金沢市への教訓

糸魚川市駅北大火は、震災に起因しない火災としては約40年ぶりの大規模市街地火災であり、特に「強風による飛び火により延焼拡大」したことから、火災としては初めて「風害」として災害認定されました 。

この火災を大きく拡大させた要因は糸魚川-静岡構造線に沿って吹き下ろす強風(ベンゲおろし)という地理的条件と、木造家屋が密集する市街地という都市構造が重なったことにあります 。

これは、地形や気象条件は異なれど、木造密集市街地という脆弱性を抱える金沢市にとっても、極めて深刻な教訓です。

2. 「二度と繰り返さない」災害に強いハード整備

復興まちづくりの方針の柱の一つは「災害に強いまち」です。延焼防止と初期消火能力の強化に向けた徹底したハード整備は、金沢市の防災計画策定において最も参考にすべき点です。

  • 延焼遮断帯の形成と不燃化の義務化: 被災地内の狭隘な道路を幅員6mに拡幅し、緊急車両の通行路と火災の延焼を食い止めるラインを確保しました 。さらに、主要な通り沿線の建物には、地区計画と条例に基づき準耐火建築物以上を義務化し、建設コスト上昇分は国事業を活用して支援しています 。
  • 初期消火体制の徹底強化: 初期消火能力を向上させるため、地上式消火栓の約3基に1か所、40ミリ小口径ホースを配備 。また、大型防火水槽の設置 や、海水・用水など自然水利を最大限活用するための取水口の増設(新規7箇所)を行い、水利確保を抜本的に強化しました 。

3. 復興を支えた哲学:「カタイ絆」と「対話」

復興まちづくりは、単なるインフラ整備に留まらず、地域の「絆」と被災者への「配慮」を最優先に進められました。

  • 「カタイ絆」と対話の重視: 復興の目標は「カタイ絆でよみがえる 笑顔の街道 糸魚川」 。行政は、発災直後から首長と被災者による「被災者説明会(対話の場)」を全23回開催 。この地道な対話こそが、復興を支える基盤となりました。
  • 負担ゼロの生活再建支援: 災害廃棄物(がれき)の撤去費用約6億4千万円を国・県の補助等を活用し、個人負担をゼロとしました 。また、訪問医療診療所や交流スペースを併設した復興市営住宅を整備し、高齢化率の高い地域コミュニティの維持を図りました 。
  • 「大火の記憶」を次世代へ伝承: 「こども消防隊」の設置 、市民応募でデザインされた復興まちづくり版マンホール蓋への更新 、復興ホームページ「HOPE糸魚川」開設など 、地域への愛着と防災意識を育む取り組みが展開されています。

まとめ:糸魚川の教訓を金沢の防火対策に

今回の糸魚川市の視察で得た最も大きな教訓は、「火災の脅威はいつでも、どの地域でも現実になり得る」ということです 。

金沢市には、糸魚川市と同様に狭隘な路地木造密集市街地が多く残っています。糸魚川の経験から学んだ「延焼を防ぐハード整備」「地域コミュニティを活かすソフトな支援と伝承」のノウハウは、金沢市の喫緊の防火・防災対策に直結させるべき視点です。

今後、金沢市の防災計画策定や、都市計画における防火地域指定の強化、地域住民への初期消火体制の普及など、「いつか起こるかもしれない大火」を防ぐための具体的な施策に、この貴重な学びを活かしてまいります。