就学を願う親子の不安をなくす理念を形に:「地域の学校」就学を願う医療的ケア児の保護者を孤立させない

こんにちは。金沢市議会議員の宇夛裕基です。
私は、全ての子どもが地域の友達と一緒に学び、成長できる社会を目指しています。金沢市も、医療的なケアが必要な子(医療的ケア児)が地域の学校に通えるように応援する方針を立ててくれています。
※特別支援学校へ進学する選択肢を否定するものではありません。
【金沢市の教育方針】
金沢市教育委員会は、「学校みんなで一緒に学ぶ環境を整えます」「就学の相談を充実させます」という方針を掲げています。(詳細:金沢市 金沢市特別支援教育指針(第2次))
しかし、この素晴らしい市の「思い」が、保護者に本当に届いているかというと、まだまだ壁があるようです。保護者の方から、「地域の学校に入れたいのに、どこに相談したらいいか分からず、不安で心が押しつぶされそうになる」という切実な声をいただきました。
これは、誰かの努力不足ではなく、「市の仕組み」が、保護者の不安に追いついていないという問題です。
市議会議員として、このような保護者の声を行政に届け、少しでも改善していきたいと思っています。
1. 昔と今:誰もが学べる学校への長い道のり
障害がある子の就学について、歴史的には大きな転換点を迎えました。
かつて、医療的ケアが必要な子どもたちは、地域の学校ではなく、主に特別支援学校や自宅での訪問教育が中心でした。地域の学校で「みんなと一緒に学ぶ」ことは、とても難しい時代が長かったのです。
しかし、「地域の仲間と共に学びたい」という願いを実現するため、状況は大きく変わり始めます。
特に、2013年の学校教育法施行規則の改正は大きな転換点でした。この改正により、保護者の意向を最大限に尊重したうえで、地域の学校の「普通学級」や「特別支援学級」で学ぶことも、正式で重要な選択肢となりました。
さらに、2021年には、国が「医療的ケア児とその家族を支援することは、国や自治体の義務です」と法律で定めたことで、状況は大きく変わりました。
法改正が進んだ今、この**「地域の学校で共に学ぶ」という目標を、現場レベルで実現・充実させなければならない**段階に立っています。
2. 就学までの二つの「仕組みの壁」
【壁 1】保護者にとって就学先決定までのプロセスが複雑である
就学の相談では、「学校生活のこと」と「安全な医療ケアのこと」の両方を総合的に判断して、就学先を決めなければなりません。
小学校へ就学前の6月ごろには教育相談があり、秋には就学前健診があり、それを踏まえて教育委員会との合意形成を行い、そのあとに教育支援委員会からの審査結果が届きます。審査結果は保護者の意向と異なる場合もありますので、そこから更に教育委員会と協議をしたり、受け入れ先の学校と実際の運用を話し合います。
このような複雑なプロセスの中で、保護者がいつ、誰に相談すれば良いかが不明確であるという意見をいただきました。保護者は、自分で情報を集めなければならないため不安が募ってしまいます。
【壁 2】「決定」と「現場の準備」の責任のズレ
就学先は、教育委員会が保護者の意向を最大限に尊重して決定します(学校に決定権はありません)。
しかし、決定後、実際のサポート内容(運用)は、受け入れ先の学校と保護者との間で具体的に話し合われます。この時、学校側が「人的リソースや経験から、万全のサポートができないかもしれない」という不安を抱えていると、それが保護者に伝わり、結果的に保護者の選択に影響を与え、不安を増大させてしまいます。
本来、教育委員会が決定した以上、学校現場は保護者に対して**「万全のサポート体制を約束する」のが筋です。この「決定の責任」と「現場の実現可能性のギャップ」が、大きな課題です。
3. 仕組みを「安心」に転換する
この問題は、仕組みを変えることで必ず解決できます。私は長年医療現場でのチーム連携を見てきた経験から、この課題解決に「教育」や「保育」と「医療」の連携が不可欠だと確信しています。
金沢市が真に「子どもに優しいまち」となるためには、理念だけでなく、制度の隅々まで「安心」が行き届いていることが不可欠です。この課題を解決するために、関係各所へのヒアリングを進めてまいります。
引き続き、皆様からの貴重なご意見をいただければと思います。
それを市政に届け、「理念と現場が一致した」子育て支援や教育の実現に向けて尽力してまいります。